俺様外科医の極甘プロポーズ

 私はパソコンの乗ったカートに体温計と血圧計を乗せて、担当している患者さんのもとへと向かう。ひとりひとりカルテを見ながら検温をして回る。

特に何のトラブルもなく、四人目の患者さんの部屋の前に立つ。

晴也先生が主治医で今回の入院の目的は糖尿病の教育入院。血糖値が全く下がらず、食事とインスリンのコントロールが目的となっている。

「こんにちは、矢部さん。今日担当する花村です。お変わりないですか?」

「とくにないよ」

 六十歳の会社経営者という矢部さんは人当たりのいい笑顔でそう答える。

「検温しますね」

「さっき昼を食べたと思ったらもうそんな時間? あっという間だな」

 いいながら私の渡した体温計をわきに挟む。

「今日は、三時から栄養士との面談がありますよ」

予定を伝え血圧を測りながらふとベッド周りに目をやると、お菓子の袋が目に入る。

枕の下にうまく隠そうとしているみたいだけど、見えてしまったものは黙っているわけにはいかない。

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