俺様外科医の極甘プロポーズ
「矢部さん。病院の食事のほかになにか召し上がっていませんか?」
「いや、食べてないよ」
「では、その枕の下にあるものはなんですか?」
私が指をさすと矢部さんはあわてた様子でこう言い訳する。
「ああ、これはしまうところがないからここに置いてあるだけだよ。食べてない」
置くところがないだなんて苦しい言い訳だ。食べていないのも嘘に決まっている。
「ゴミ箱にも袋が捨ててありますけど、これの中身は誰が食べたですか?」
「知らないよ」
「矢部さん。このままでは入院している意味がありませんよ。ご自分の体をもっと大切になさってください。このことは、主治医に報告をさせていただきますね」
「うるさい! 黙れ! 食べてないっていってるだろ!」
「矢部さん!」
「看護師の分際で俺に指図するな!」
激高した矢部さんはお菓子の袋をむんずとつかむと私に向かって投げつけようとした。
「やめてください」
私の体に当たった羊羹やもなかはバラバラになって床に散らばる。
「いますぐこの部屋から出ていけ! お前の顔なんて見たくもない」
矢部さんはそう言って頭から布団をかぶった。