俺様外科医の極甘プロポーズ
定時に仕事が終わり、着替えて通用口に向かうとそこに晴也先生がいた。誰かを待っているのだろうか。階段を上がってきた私を一瞬誰かと勘違いしたようだった。
「……花村さん」
「お疲れ様です、晴也先生」
「お疲れ様」
「誰かお待ちですか?」
「いいや」
晴也先生はゆっくりと首を横に振った。私の勘違いだろうか。
「じゃあ、また明日ね」
「……あ、先生。今日は、すみませんでした」
「なんのこと?」
「矢部さんの件です」
「ああ、あれね。師長が言っていた話か。別にいいよ。外科と内科医じゃ患者の質が違うんだ。なれるまではいろいろあっても仕方ないんじゃないかな」
晴也先生はサラリとそういった。もっと責められるかと思っていたのに拍子抜けだ。
「しこれからしっかり勉強します」
「そうだね。やる気がある子は大歓迎だよ。頑張って」
「はい」
「ああそうだ。来月神戸で糖尿病学会があるんだけど一緒に来る? 色々見れて勉強になるんじゃないかな」
いいながら先生はカバンからパンフレットを取り出す。そこには糖尿病学会の日程と場所が書かれていた。
「これあげる。交通費もホテル代も病院から出すようにするからぜひおいでよ」
ホテル代ということは、宿泊が伴うってことだ。晴也先生と一緒になんて壱也先生がゆるしてくれるだろうか。
「……日帰りではむりなんですか?」
「無理じゃないけど、東京神戸間を行き来するのは大変でしょ。……もしかして僕のこと警戒しているの?」
「いえ。そういうわけではなくて……」
図星を突かれて私は口ごもる。
「大丈夫だよ。部屋は別にとるわけだし。だから考えておいて」
「わかりました。ありがとうございます」
「じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様です」
私はそのパンフレットを折りたたんでバッグにしまうと病院を出る。
そして駅前の喫茶店で壱也先生が来るのを待った。