俺様外科医の極甘プロポーズ
当直明けの勤務で疲れていないはずがないのに。そんな先生の態度に私は愛情を感じずにはいられない。

「壱也さん、ありがとう」

「どうしたんだ、急に改まって」

「ううん。なんでもありません。あ、これかわいくないですか?」

「いいね。きっとりさのきれいな指に映えるよ」

 さらりと褒められて私はひとりでほほを赤らめる。それに気づいた先生はまた私をほめてくれる。

「まあ、どれでも似合うにきまってるけどな」

「壱也さんったら」

おのろけ満載のバカップルだと思われるかもしれない。

でも、婚約指輪を選ぶなんて一生に一度のことだ。だからどうか許してください。

そんなことを思いながら私はいくつかピックアップして試着させてもらった。

「おサイズは七号でよさそうですね。とてもきれいな手をしてらっしゃるのでどのデザインもよくお似合いですよ?」

「本当にそう思います」

 店員さんの社交辞令に真顔で同意する壱也先生を見て、私はまた顔を赤くする。

「まあ。愛されてますね。こんなに素敵な男性が旦那様だなんて、うらやましいですわ」

「ありがとうございます。私、これにします。いい? 壱也さん」

 悩んだ挙句に決めたのは、一粒ダイヤのシンプルなもの。これは、クリスマスの時に先生がくれたネックレスと同じデザインだ。

「いいよ。じゃあ、これにしよう」

リングに刻印を入れてもらう都合で持ち帰ることができなかったけれど、二週間後の受け取りを楽しみにして店を出た。

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