俺様外科医の極甘プロポーズ
神戸から戻って、私は三日ほど仕事を休んだ。
一日目は壱也先生とずっと家にいて、二日目は先生の知り合いのカウンセラーに会った。そして三日目の午後、晴也先生が突然病院を辞めたことを聞かされた。
「なぜか一緒に吉野師長も退職してしまって、内科病棟は大混乱ですよ!」
私が体調不良で休んでいると聞きつけた田口さんは、夜勤明けだというのにケーキをもってお見舞いに来てくれていた。
「吉野師長も? それは大変だね。いや、大変どころじゃないよね。これは休み明けが恐ろしいな」
「そうなんですよ。あの二人、付き合っていたんじゃないかって話ですよ」
「そうなの!」
ということは、先生の言っていた情報提供者というのは吉野師長なのかもしれない。だとしたら、吉野師長はどんな気持ちで晴也先生の企みを壱也先生に打ち明けたのだろう。
自分の恋人が企んでいることを知ってしまったことも、それを誰かに話すことも、私なんかが推し量ることさえ憚られるくらい、苦しい決断だったのではないだろうか。
「それより、先輩体調は大丈夫なんですか?」
「うん、もう治りかけなの」
「なら安心です。しっかし、本当に素敵なマンションですね。先輩と壱也先生の愛の巣を覗き見てしまって私は今、猛烈にドキドキしています!」
田口さんは興奮気味にそういって、足をバタバタさせている。
「もう。何言ってるの、田口さん」
田口さんの明るさに、私も自然と笑顔になる。
「あ、やっと笑いましたね!」
そう言われてはっとした。自分では笑っているつもりだったのに、そうは見えなかったってことだ。
「この世の終わりみたいな顔した先輩なんて、先輩じゃなりませんよ」
「そうだね。ありがとう田口さん」
「そうだ! 最後にもう一つ報告があります」
「なになに?」
「内科病棟の師長代行に先輩の名前が上がっているらしいですよ?」
「師長代行? 私が!?」