俺様外科医の極甘プロポーズ
「……花村さんは晴也先生と一緒に学会へ行っています」
「やはりそうでしたか」
「壱也先生、彼女を連れ戻してあげてください」
吉野師長の言葉に、俺は首を横に振った。
「いや、いいですよ。そこまでするつもりはありません。花村は、俺に言ったら学会へ行くことを反対されると思ったんでしょう。副院長と一緒にというのは癪だけど、このまま知らなかったふりをすることにしますよ」
「そういうことじゃないんです!」
「どういう意味ですか?」
「晴也先生は、ホテルをひと部屋しかとっていません」
「あの、どうしてそれがわかるんですか?」
もしそれが真実でも、副院長がそんなことを言うはずがないだろう。
「見たんです」
「見たって、ホテルの予約内容をですか?」
それは彼自身のホテルの予約内容を見たというだけで、花村の部屋を取っていないということには結びつかない。
「……なにを言っているのかわからないですよね。壱也先生にだから話しますけど、私たち付きあっているんです」
「あなたが、副院長と?」
「はい。同棲もしています。あなたに復讐したい気持ちを募らせていることも知っています。ここまで言えばお分かりですよね?」
吉野師長の告白をきいて、彼女が訴えていることの信憑性が増した。
「まさか、俺に復讐したいがために花村を?」
「だと思います。ここ数日彼の様子が変でした。私に触れようともしなくなりました」
「……わかりました。仕事が終わり次第、神戸へ向かいます」
「ありがとうございます。これが彼の予約したホテルです。部屋番号は聞きだせたら連絡します」
「わかりました」
俺は神戸行きの新幹線に飛び乗った。