俺様外科医の極甘プロポーズ
ドアをノックしても返事はなかったので「失礼します」といって中に入った。
部屋の中は薄暗かった。誰も訪室していないから当然だが、カーテンは閉められたまま。私はヒタヒタとベッドに歩み寄ると寝ている壱也先生に顔を覗き込んだ。
頬はこけていて、目はくぼんでいた。暗い部屋でも顔色が悪いのがよくわかる。早く点滴の針を刺したいけれど、どうしたらいいのだろう。必要に迫られてきてみたものの、声をかける勇気がない。そうこうしていると、乾いた唇が動いた。
「ようやく誰かきたと思えば、人の顔をじろじろと見て失礼な極まりないな」
「す、すみません」
驚いて、思わず声が上ずってしまった。
「ここの看護師たちはこうやって患者をほったらかしにするのか。俺が入院してから数時間、誰も来ないなんてあり
えない話だ」
言いながら壱也先生は目を開けてこっちを見た。
「仕事のできない看護師はいらないな。夜勤者は誰だ? 後で事務長に報告する」
「ちょっと待ってください。そうじゃないんです」
「言い訳はききたくない」
全員処分されてしまう。私は焦った。と同時に、自分のことしか考えていない壱也先生に腹が立った。