俺様外科医の極甘プロポーズ
「でもなんでまた急に、壱也先生はこんな病院に連れ戻されたんでしょうか?」
ナースステーションで田口さんがいった。すると主任の上野さんがうんうんとうなずく。
「そうだよね。私もそれ思った。でいうか、田口。こんな病院って、よくいうわ」
「だって、そうじゃないですか。だってT大にいたんですよ?まだ若いんだし、あっちでバリバリ仕事した方がいいと思うんです。うちの病院、医者不足ってわけじゃないし」
田口さんの言うことはもっともだ。医者の人数は足りているし、忙しいわけでもない。院長もまだ現役で、晴也先生だっている。
「もしかして、T大でなにかやらかした?とか」
「まさか! あんなにイケメンなのにですか?」
「そっか、それはないか」
田口さんと主任の会話に、別のスタッフがツッコミをいれた。
「ちょっと、ちょっと二人とも。顔は別の話でしょう」
「でもまあ確かに男前だよね」
「そういえば、兄弟似てなくない?」
「ほんとほんと」
こんなおしゃべりをする余裕があるのは、柏瀬病院のいいところでもあり、悪いところでもある。口より手を動かさないと、朝の回診に間に合いませんよと思いながら私はテーブルの上に乱雑に置かれた紙カルテをそろえてラックへと収めた。
それから何気なく顔を上げると冷ややかにこちらを見つめる壱也先生の姿が目に入る。私は瞬時に体が凍り付いた。一刻も早くみんなのおしゃべりを止めなければと思うけれど、時すでに遅し。