俺様外科医の極甘プロポーズ
パソコンを片付けた後、ベッドのそばに膝をつくと先生の体に布団をかけた。無垢な寝顔を見ていると、あの胸の痛みがよみがえってくる。
私は今日、自分の身を守るために壱也先生のこと気持ち悪いだなんて言ってしまった。
彼のすべてを否定するようなことを言ってしまった。
先生は悪者になることを厭わず、病院再建のために尽力しているのに。
そんな先生のそばにいると余計に自分の弱さが露呈した。情けなくて泣けてくる。
「……花村」
寝ていると思っていた先生の声に驚いて顔を上げる。すると先生は困惑した表情で私を見つめていた。
「お前、泣いてるのか?」
私はあわてて指で涙をぬぐう。見られたくない姿を見られてしまった。
「起こしてしまってごめんなさい。おやすみなさい」
寝室から立ち去ろうと立ち上がる。けれど、先生は「待て」と言って私の腕をつかんだ。
「放してください」
振りほどこうとしたけれど、先生の力にはかなわなかった。
「泣いている理由を話したら解放してやる」
「泣いてなんていません」
「嘘をつくな。帰宅してからずっと様子がおかしかった。何があったか話してみろ」
先生はさすがだ。すべてお見通しというわけだ。けれど、
「話せません」
私は言った。話せるわけがない。