俺様外科医の極甘プロポーズ

「いまはなんの時間ですか?」

 口調こそやさしかったけれど、その目は完全に笑っていなかった。私はあわてた。

「なんの時間って、そんなの決まってるじゃないですか先生。カンファレンス中です。ほんの少し話題がそれてしまっただけで、ね、みんな」

 みんなは私の言葉に必死でうなずく。苦しい言い訳だということは承知している。
でもどうか、初日くらい見逃してください。

「なるほど、カンファレンスね」 

私の祈りが通じたのか、壱也先生は薄く微笑む。そして中央のテーブルの椅子を引いてすっと腰を下ろした。
ここに座るの?

みんなぎょっとした顔で先生を見る。

「どうぞ続けてください。外科部長として、この病棟のすべてを把握しておく必要がありますから」

いま、外科部長って言った?

私は首をかしげる。この病院には山田先生という外科医がいる。難しい手術はできないけれど、人柄のいい先生だ。外来には先生を頼ってくる患者がたくさんいる。

壱也先生が外科部長になるのだとしたら、山田先生はどうなるのだろう。降格ということだろうか。

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