俺様外科医の極甘プロポーズ
「休むってそこですか?」
「ああそうだ。行くぞ」
先生が私の手を引いた。まるでなだれ込むように目の前のホテルへと足を踏み入れる。
自動ドアが開いた。ロビーは薄暗く、大きなパネルだけは派手な光を放っている。
私たちは吸い寄せられるようにその前に立つ。そのパネルには、大きなベッドを中心とした部屋の写真がたくさんあった。
「どうすればいいんだ?」
「私に聞かないでください。ここで部屋を選ぶんじゃないですか?」
「なるほどね……」
先生はしばらく悩んで「どれがいい?」と私に聞いてくる。
「どれでもいいです」
これがいいです、なんて言えるはずがない。今の私には、部屋を選ぶ余裕なんてないのだ。
「じゃあ、ここにする」
先生が選んだのは無難なデザインの部屋だった。顔の見えないカウンターで鍵を受け取りエレベーターで部屋に向かう。
ドアを開けてすぐは普通のビジネスホテルのようだった。靴を脱いで部屋に入ると先生はすぐにベッドに寝転がった。
「大丈夫ですか?」
私は先生に駆け寄ると足をそっとさする。
「……大丈夫だ。こうして横になればだいぶ違う」
うつぶせに寝ている先生の顔は全く見えなかったが絞りだすような声がよほど痛いのだろうと想像させる。