俺様外科医の極甘プロポーズ
「まじめだね、りさは」
先生はそう言って肩をすくめる。
「冗談に決まってるだろ」
「へっ、冗談?」
「現実逃避してみただけだって!」
検索サイトを閉じると、先生はスマホを枕元に投げた。
「なぁんだ。びっくりさせないでくださいよ! ちょっと本気で考えちゃいましたよ」
「俺と南の島で暮らすのも悪くないな~って?」
先生は私の目をじっと見つめる。私の答えに期待しているのだろう。だからわざと、そっけなく言った。
「いえ、毎日暇だろうなとか、私泳げないけど大丈夫だろうかとか」
「なんだよそれ」
拗ねた子供のような顔をされて、私の母性本能がうずく。
「嘘ですよ」
いいながら先生の頭をそっとなでる。怒られるかもしれないと思ったけれど、大丈夫だった。先生はそっと目を閉じた。
「なんか、落ち着く」
「そうですか?」
「うん。さすがは看護師さん。いつもこんなことしてんの?」
「まさか、しませんよ」
「好きな人限定?」
「……まあ。嫌いな人にはしませんよね、普通」
私の言葉に、先生は満足そうに微笑む。そうこうしているうちに、彼は眠ってしまった。
そんな姿を見たら、どれほど疲れていたのかがわかって、「帰りましょう」だなんていえなかった。
私は先生に布団をかけると、ヘッドボードにたくさんついたスイッチを手当たり次第に押して部屋の電気を消す。それから隣に横たわった。
静かだ。静かすぎるくらい何の音もしない。窓がないせいだろうか。まるで箱の中に閉じ込められたような感じがして、息が詰まりそうになる。
私は目をつむった。すると先生の寝息が聞こえてきた。なんだかほっとする。その規則正しい音を聞いているうちに、私はいつの間にか眠ってしまったようだった。