俺様外科医の極甘プロポーズ

 壱也先生が病院にやってきてから三か月。梅雨が明け、気持ちも晴れやかにと行きたいところだけれどそううまくはいかない。柏瀬病院の医者の半分がその顔ぶれを変えた。山田先生の退職はただの序章に過ぎなかったことを、私は今になって思い知らされる。

院内は混乱していた。大学病院クラスでバリバリと仕事をこなしていた若手の医師たちが各科に一人ずつ入ってきた。それとともに、患者の重症度が上がりより高度な医療を提供できるようになった。それに比例するように、看護師に求められることも多くなってしまった。後輩の田口さんは嘆いていた。

「壱也先生のやり方に、ついていけません」

 そう言って辞めて行った看護師は今月で十人。離職率がとても低かった柏瀬病院にとって、三か月で十人もの退職者を出すのは異例のこと。それなのに元凶とも入れる壱也先生が涼しい顔をしていられるのは、入職希望者が後を絶たないからだ。

優秀な看護師は好待遇で雇い入れますと求人を出し、やる気とスキルを持った人材がたくさん集まってきている。

いい医者といいコメディカル。人材が充足すれば、さらに患者が集まる。とてもよい流れではあるのだろうけれど、この変化についていけないスタッフは退職の道を選ぶしかない。果たして本当にそれでいいのだろうか。

 私はたまたま総務部の前の廊下で壱也先生と新しい事務長が話しの聞いてしまった。この事務長はいわゆる医療系のコンサルタントらしいのだけれど、浅黒い肌に高級スーツ、高級時計が嫌味なくらいマッチしている。病院のクリーンなイメージには似つかわしくない風貌だ。

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