俺様外科医の極甘プロポーズ
久しぶりの職場は以前にもまして居心地の悪いものになっていた。兄が根も葉もない噂をばら撒いてくれたおかげで、俺は前以上に悪者になっていた。
だから看護師たちは俺を無視することになんの罪悪感も感じていないようだった。
俺の話を誰も聞いてくれない。治療の指示を出したいのに誰も受け付けない。職務放棄も甚だしい。いよいよ怒りを抑えられなくなった時、見かねた花村が俺に話しかけてきた。
『壱也先生。それ、私がやります』
仕事が詰まっていた俺は、花村にすべてを託した。正直助かりはしたが、そのおかげで同僚たちから誹謗中傷を受けることになってしまった。
『いいカッコしすぎ』
ぼそりと誰かが言った。俺の耳に届いていたということは花村にも聞こえていたはずだ。
どれほどつらかっただろう。仲間の口から発せられた言葉で傷つくなんて、あってはならないことだ。彼女の居場所を俺が奪ったも同然。
その原因の作った俺となんて関わりたくなくなっただろう。
案の定、花村は帰ってこなかった。
いくら待っても玄関のドアが開くことはなかった。
俺は好きな女すら守れないような男だったのか。自分の至らなさを悔やんだ。
もし傷ついた彼女が自ら命を絶つようなことがあったら、俺はどうやって償えばいいのだろう。
そんなことを考えたらいてもたってもいられなくなって、マンションを飛び出した。