俺様外科医の極甘プロポーズ
旅行当日の夕方、私は定時で仕事を上がり、家で準備をしながら先生の帰りを待つ。
予約した箱根の温泉旅館までは約一時間半。二十時にはチエックインしないと、夕ご飯にはありつけないらしい。先生は十八時までには帰ってくると言っていた。あと三十分。本当に大丈夫だろうか。
私は祈るような気持でリビングのソファーから玄関ドアを見つめる。すると間もなくして先生が帰宅する。
「ただいま。ごめん、遅くなって!」
先生は息を切らせてる。急いで帰ってきてくれたのがわかって私は嬉しくなる。
「おかえりなさい。荷物はまとめておきました」
ボストンボストンバックを指さして言うと、先生は「さあ、行こうか」と車のキーを手に取る。
二人で地下の駐車場に向かい、先生の所有する車に乗り込む。考えてみると、先生の車に乗るのはこれが初めてだ。
しかも、こんな高級外車に乗るのも初めてだったりする。私は緊張しながらシートベルトを締めた。
「じゃあ、出発するよ」
「はい。おねがいします!」
ハンドルを握る先生の横顔は、やっぱりりりしかった。私はそんな先生の顔を盗み見てはにやけるという行動を助手席でひとり繰り返していると、「なんかうれしそうだね」と先生は言う。
「はい。だって、温泉楽しみなんですもの」
私は弾んだ声でそうごまかした。