赤ずきんは食べられたい!2
「……さ………」
猟師に頭付き食らわせた俺は、元凶の赤ずきんが来る前に逃げようとした。すると、どっからか声が聞こえる。
こう、蚊が何となくブーンって言ってる感じ?
「おお……み………ん!!」
?俺呼ばれてる?誰だ?
俺はきょろきょろと辺りを見回して、下をみる。すると……何かちっちゃいのがいた。
何となく見覚えがある気がするな?
「狼……ん!!」
ああ。気のせいだな、うん。
俺は夕方のテレビでも見ようと、そのちっこいのから背を向ける。すると、足に何か刺さった。
「いっっっっだ!!」
どうやらちっこいのが、つまようじで刺したらしい。あぶねーよ!
「何すんだよ赤ずきん!」
俺は赤ずきんの頭巾を摘まんで引っ張り上げる。
「狼さんが……る………よ」
小さすぎて何言ってんのか分かんねぇんだけど。
俺は聞こえるように、耳元へと赤ずきんを近付ける。
「私を食べてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?何で食べてコールだけやたら声でかいんだよ!!」
赤ずきんは俺の肩に乗ると、腰に手を当てふんぞり返る。
「お婆ちゃんに頼んで、今度は小さくなる薬を作って貰ったのよ!これならパクっと丸飲みできるでしょ!」
ふふんって顔で鼻鳴らして、にっこり笑ってる赤ずきん。いくら俺でも沸き上がる感情がある。
そう、殴りたいこの笑顔ってやつだ。
「さぁさぁ!狼さんは錠剤派と見込んで小さくなったのよ!遠慮なくいっちゃって」
「その情熱と忍耐と努力を、もっと別のとこにいかせよマジでうざいから」
そんなことを言っていると、コガネムシがやって来た。
「え?ちょ?何よ?!」
コガネムシはどうやら赤ずきんを餌と見なしたらしく、そのまま俺の肩の上から連れ去る。
ナイスだ。コガネムシ!今度見かけたら食べないでやろう!
いや、コガネムシ俺の主食だからさ。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!助けて狼さーん!私初めて(食料的な意味で)は狼さんって決めてるのよー!!」
「いかがわしい言い方してんじゃねぇよ!!お前のその発言がどれだけの誤解を生み、俺の生命が危機に晒されるか考えろやボケェ!!」
ついに関西弁っぽいツッコミに……。
「赤ずきぃぃぃぃぃん!!」
あ、忘れてた。こいつそう言えば居たんだった。
さっき俺が頭付きしたせいで、鼻から滝のような血流してるけど。スゲーな、鼻血ブー所じゃねぇな。鼻汁ブシャーだな。
「おのれコガネムシめ!!赤ずきんは渡さん!」
「猟師!」
ホッとしたように両手握り締めてる赤ずきんに、猟師はこれまた殴りたくなる笑顔で赤ずきんを見ている。
てか、今キランって効果音聞こえたんだけど。昔の漫画みたいにキランって歯光らせてたんだけど?
ま、一応赤ずきんのブラックペッパー(王子)みたいだし、後はこいつに任せて帰ろう。うん、そうしよう。
「食らえ!!」
「きゃぁぁぁぁ!どこ狙ってるのよ!!」
……今完全に赤ずきんの顔面に弾が当たりそうだったな。え?何こいつ、猟師の癖に銃の腕前、水鉄砲持ってる子供並みなの??
「お前さ、銃苦手なわけ?」
「何を言っているんだ馬鹿め!俺は狙った獲物は必ず撃ち落としてきた男だ」
銃を再び構えて、赤ずきんにウィンクをする。
「そう、狙った獲物(赤ずきん)の心臓(ハート)は絶対に外さない!」
馬鹿だー!!馬鹿だとは思ってたけどここまで馬鹿だとは思ってなかった。
「猟師の、猟師の……」
流石にキレるよな。何か赤ずきんの背中から白い煙みたいの出てるし。
「ばぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁ!!!」
赤ずきんの叫びに近い声と同時に、ポンっと煙が弾けて、元の大きさの赤ずきんが降ってきた。
猟師の溝内の上に。
「ふぐぉぉぉぉぉぉ!!」
今度は口から血を吐き出している。流石に死んだんじゃないか?
一応応急処置してやるか。
「あ、あか……あかずきん…………ごほっ………無事で……よかっ―ガク」
死んだぁぁぁぁぁ!!……あ、良くみたら瞼震えてるし、薄め開けてる。おい、赤ずきん。お前が感動的に猟師を起こすのを待ってるみたいだぞ。
「これで邪魔者は消えたわね。さ!狼さん!」
すみませーん、誰か探偵呼んでくださーい。女の探偵でも、いっそキザな怪盗でもいいから。
もうこれ殺人事件だよ!!
「私を食べ―」
「そんな場合じゃねぇだろ!後ろでお前が介抱してくれるの待ってる馬鹿手当てしてやれよ!」
ほら、薄目だったのが完全に目ぇかっ開いてるぞ!何か血走ってて怖いけど。
「恋人って、楽しいのは最初だけよね」
悟り開いたような顔で何を言い出してんだよ!てか後ろの猟師ほんと怖いんだけど!!服も血だらけだし鼻からも口からも血が出てるし!さっきから瞬き一つせずにお前ガン見してるし!
もうこれギャグじゃなくてホラーだろ!!ホラー小説にジャンル変えろよ!
「私を食べて?」
「嫌だ」
「俺が食べて上げるよ。ベットの上―」
赤ずきんは素早く猟師から猟銃を取り上げると、それで猟師を叩きのめした。
………………次回からホラー小説赤ずきんにしよう。