高校生夫婦はじめました。
祖父の家には数えるほどしか行ったことがない。お母さんは元は名家のお嬢さんだったらしいけど、一般企業に就職を決めて家を出て以来、疎遠気味だという話だった。
私自身、大きな日本家屋には良い思い出がない。法事のときに何度か、お母さんに連れられてここに来たことがある。そのときの親戚たちからの視線は冷やかで、私たちが快く思われていないことは明らかだった。

これまでとは違って、私は一人で部屋の隅に正座している。隣にお母さんはいない。
一堂に会した親戚たちの視線はやっぱり冷やかで、それに加えてこの日は“哀れみ”や“面倒”といった感情も混じっていた。ヒソヒソした声を、この耳はしっかりと拾ってしまう。

“うちは子どもが多いから、引き取れないわよ”

“うちだって無理だ。上の子が受験を控えてるのに養子なんて――”

“それよりも父親はどうしたの? そもそもあの子が勝手に結婚を決めてつくった子どもなのに――”

(ああ。そうなんだ)
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