高校生夫婦はじめました。

私にとっては精一杯の言葉だった。いろんなものを我慢して、精一杯、大人になろうとして口から発した言葉だった。

だけど精一杯の気持ちに対して、優しい反応が返ってくるとは限らない。頭上に降ってきたのは、受け入れがたそうな大人たちの声。

“良い子ではあるけど……”

“ちょっと出来すぎじゃない? 裏がありそうで怖いわ”

私は頭を下げたまま、ぼんやりと考えていた。


(……生きていくのって難しいな)



結局、その話し合いの中では私の引き取り先は決まらなかった。近々祖母の法事があるからそこで最終決定しようということになり、私の身柄が宙に浮く。祖父は「しばらくウチにいるか」と気遣ってくれたけど、私は断って自宅に戻ることにした。

祖父は悪い人じゃない。一人になってしまった私のことをほんとに心配してくれていると思う。

でも祖父は私を引き取れない。祖母が生きていれば違ったかもしれないけど、祖父は年頃の私と二人で暮らすことに自信がなさそうだ。なんとなくわかる。お母さんも祖父とは会話があまりなかったと言っていたから、子どもと接することが苦手なんだろう。私も、気を遣われる空気が苦手だから。探り探りの祖父と上手に距離が詰められるほど、自分が大人だとも思えなかった。



私はどうなるんだろう。

本当はどこにも行きたくない。
よく知りもしない親戚のお世話になんてなりたくないし、遠くに引っ越すことになったら正臣と真仁さんにも会えなくなってしまう。

お母さんが生きている間は、私の居場所が確かにあったのに。“一人”って、こんなに宙ぶらりんで、好きな場所にとどまることも難しいものなのか……と。


自分の“今”の不確かさに、不安で押しつぶされそうになっていた。
< 12 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop