高校生夫婦はじめました。
自分で言っておいて、勝手に一人せつなくなった。
正臣も黙ってしまう。時任家の居間はまた静まり返った。
“チク、タク、チク、タク……”
子どもの頃から聞き慣れた、時任家の壁掛け時計の音。私はテーブルに伏せたまま、自分の腕を枕にしてそっと目を閉じる。規則的な秒針の音に意識を合わせ、静かな世界に沈み込む。
ここで正臣と真仁さんと晩御飯を食べて、テレビを見ながらおしゃべりをして。家に帰る頃にはお母さんがいた。お母さんはお土産にコンビニでアイスを買ってきてくれて、二人でアイスを食べながら一日のうちに起きたことを話した。――そんな日々はもう戻ってこない。
お母さんが死んで、幸せな世界の半分が崩れた。それに伴って、あとのもう半分もドミノ倒しのように崩れていく。お母さんを失ってひとりぼっちになった私には、ここにとどまる自由なんてない。
(時間が巻き戻ればいいのに……)
どうしようもないことを考えていたら、正臣がすくっと立ち上がった。
トイレかな、と私が特に気に留めずにいると、彼は私のすぐ傍までやってきて、隣に腰を下ろした。
「……正臣?」
片方胡坐をかいて、片方膝を立てて座った彼は、じっと私の目を見つめている。いつも通りの、考えが読みにくい無表情だった。ほんの少しだけ、緊張している。なんだろう……?
「何?」と私が尋ねるよりも早く、正臣が口を開く。
「嫁に来る?」