高校生夫婦はじめました。
“嫁にくる”?
「………………は?」
彼の言葉は突拍子がなかった。
私が目を見開いて、それ以上何も言えずに黙っていたら、正臣は更に身を乗り出して顔を近付けてくる。
「居場所が無いなら、俺と家族になれば?」
まっすぐにぶつかってくる視線に、目がそらせなくなる。
いつも通りの冷めた表情の中で、瞳だけが異様に力強い。
息遣いを感じるほどの近さに、段々息ができなくなっていく。
「俺と結婚すればいいじゃん」
彼はそう言い放ってから、じっと私の反応を待っていた。
言葉のトーンは軽くても冗談ではないらしい。
私は“結婚”という現実味のない言葉をぶつけられ、思考が停止していた。……どういうこと!?
「……え、ごめん……何? どういう意味?」
もしかして、契約結婚的なこと……?
私をここにいさせるために、形だけ結婚してくれようとしているんだろうか。なにそれ。優しすぎる……。
幼馴染の男気に私が胸を熱くしていると、正臣は続けて言った。
「一生俺が養うし、絶対に一人にさせない」
えっ。
「でも、その代わり――――」
「わっ。えっ? ……えっ……!?」
急に強い力で二の腕を掴まれて、床の上に押し倒される。
一瞬の出来事だった。
視界がぐるりと動き、天井が見える。それよりずっと手前に正臣の顔があって、真剣な顔で私を見下ろしている。
「結婚するからには本物の夫婦になる。だから……」