高校生夫婦はじめました。
正臣は一瞬面食らって、ゆっくりと目をそらした。
そして自分の手で口元を隠しながら……。
「…………そっか。“したい”か」
どういうわけか、めちゃくちゃ照れていた。
あんなに恥ずかしいことを今まで真顔で言っていたくせに。
今まで見たことのないような珍しい表情に、うっかりときめいてしまう。
これはなんていう奇跡?
――――小さい頃から一番近くにいた男の子を、好きにならないほうが不思議だと思う。
不器用だけど優しくて、いつも当たり前に味方でいてくれた正臣のことを、私は物心がついた時からずっと好きだった。一緒に晩御飯を食べるようになってからは半分家族みたいな関係だったし、「好き」と伝えることはなかったけど。というか、恋愛対象として見てもらえてるなんて、思ってなかったけど。
私はハッとして、今さっき彼に言われたことを思い出す。
「でっ……でもちょっと待って! 心の準備があるからっ……」
キスも、それ以上のこともしてみたいけど、今すぐとなると困る。正臣がどういうつもりでいるのかわからず慌てて制止すると、彼も焦っているわけではないようで、優しく抱き起こされた。
「ん。わかった」
それ以上体を触られるでもなく、口にキスをされるでもなく。
優しい唇の感触をおでこに感じた。
……わぁぁっ。
お母さん。
私、正臣と結婚するみたいです。