高校生夫婦はじめました。
その後、家に帰ってきた真仁さんに正臣が「話したいことがあるんだけど」と切り出して、時任家の居間には異様な空気が流れた。ローテーブルの一方に真仁さん。もう一方に正臣と私が正座して並ぶ。
最初は「なになに! え、ドッキリー!?」みたいにソワソワ楽しそうにしていた真仁さんだけど、正臣が真面目に結婚の話を打ち明けると、その表情は一変。
愕然としていた。
「……待って。正臣、待って。父は理解が追いつきません。どういうこと? 知佳ちゃんと結婚すんの?」
「そう」
しれっと返事をする息子に、困惑顔の父親。
真仁さんは戸惑いながら言葉を詰まらせていて、しばらくすると“……ハッ!”と思い至ったように叫んだ。
「まさかデキ婚……!」
「違う。まだできてない」
……“まだ”?
正臣の言葉に、“予定あるのかな?”と気になりつつ、とても今そんなこと訊けないなと思って黙る。“子ども……”と思いながら自分のお腹を気にする。結婚すれば、いつかはそういうことになる?
真仁さんは腕を組んで、目を瞑って“う~ん……”と悩み始めた。
それを待つ正臣の顏は眉一つ動かない。不安そうでもなく、恥ずかしそうでもない。決意を固めている様子の正臣の横顔を見ていると、私はやけにドキドキした。大人みたいな横顔が格好いいと思った。
「たとえば……たとえばだけど。知佳ちゃんをうちの養子にするとかじゃダメなの?」
真仁さんが示した代替案に、彼は毅然と答える。
「別に、知佳と兄妹になりたいわけじゃないから」