高校生夫婦はじめました。


朝食を終えると、彼は二人分の食器をシンクに運んで洗い物を始める。その間に私は洗濯機の中から洗濯物を取り出して、ベランダの物干し竿に掛けていく。早ワザで。これが我が家の、最近の朝の光景。

朝に片づけるべき家事を一通り終えると、私たちは出かける準備をする。洗い物の後でもまだ眠たそうな顔でネクタイを結んでいる正臣に、私は姿見で簡単に前髪を整えながら問いかけた。

「ジャージは?」
「持った」

今日は体育だ。一日の時間割を思い出しながら、必要なものをイメージして忘れ物がないかを確認する。正臣も思いついたようで、振り返って私に問いかけてくる。

「英単語帳は?」
「持った」

終礼では英単語の小テストがある。休み時間、みんなが単語帳を開いている時間に暗記ができないのはつらいので、絶対に忘れちゃいけない。

必要なものはそんなところだろうか? 彼と私の持ち物はほぼ同じなので、毎朝こうやって持ち物チェックができるのはありがたい。(それで忘れ物が減ったのは明らかに彼のほうだけど。)

お互いに忘れ物が無いことを確認して、私たちは家を出る。

「あ、待って。正臣」
「ん?」
「ネクタイが曲がってる」
「ああ……。知佳、やって」
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