高校生夫婦はじめました。
4月25日(水) 影山高校にて

朝、同じ時間に家を出た私たちは、最寄り駅の改札を通るタイミングで二手に分かれ、それぞれ別の車両に乗る。電車はまあまあ混んでいて、私は座ることを諦めて扉の近くの壁に凭れて立つ。鞄の中から英単語帳を取り出し、今日の英語の小テストに備えることにした。

正臣はたぶん、ヘッドフォンで音楽でも聴きながらぼんやりしてるんだろうなぁ……。
勉強しなくていいんだろうかと心配になりつつ、通常運転な彼の姿をイメージすると自然と笑みがこぼれる。

しばらく彼に思いを馳せていて、やっとのこと英単語を覚えることに集中しはじめたとき。電車が目的の駅に着いてしまった。私は慌てて英単語帳を鞄の中に戻し、電車を降りる。

改札には私と同じ制服を着ている学生が溢れていて、前方の遠く離れたところに正臣の頭を見つけた。ここで彼を追いかけたりはしない。最寄り駅の改札を過ぎてからは、私たちはただのクラスメイトだ。




私たちが通う“私立影山高校”は、最近になって“進学校”を謳おうと校則が少しだけ厳しくなった。それ以外は部活動も盛んで、いたって普通の高校だ。

「今日は終礼で英語の小テストをやるので――」
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