高校生夫婦はじめました。
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――正臣が起きる前、私は台所で朝食の準備をしていた。
熱したフライパンの上に卵を二つ落とす。“じゅわっ!”と焼ける音がして、間もなくして目玉焼ができあがる。
「よしっ」
お皿に載せて、一緒にサラダを盛り付けて。あと昨日特売で安く買えたウインナーも。
ちょうど同じタイミングで食パンが焼きあがった。すべてテーブルに運び、コップに牛乳を注いで、完成! ……となったものの、正臣はまだ起きてこない。
「もうっ……」
さっきからずっと呼んでるのに!
私は手を洗い、エプロンで拭きながら正臣の部屋の前に立つ。――彼は宣言通り、真仁さんと暮らす家を出て新しく部屋を借りた。真仁さんは引っ越し当日まで寂しそうにして、最終的にはいじけていたので、申し訳なくなった私は正臣に「本当に真仁さんと離れていいの?」と訊いた。
彼の返答は明快だった。
“ちょうどいい機会かなって”
“父さん、俺がいるから海外でやりたい研究も我慢してたんだと思う”
そっか……と、私は妙に納得した。
私と正臣は良くも悪くも似た者同士で、片親から愛情を注がれる幸せも、やるせなさも、私たちは知っている。親に“自分自身の幸せを優先してほしい”と願う気持ちも、よくわかる。
正臣がいろんなことを考えた末にこの結婚を決めたと知って、ほっとした。同時に、私が塞ぎこんでいたときに、彼はこうすることを既に真剣に考えていたんだと思うと、かなわない気持ちになった。
(子どもなのか、大人なのか……)