高校生夫婦はじめました。

正臣への評価に迷いながら、“コンコンッ”と彼の部屋のドアをノックした。

寝室はさすがに別々にしてもらいました。一緒に眠ることに憧れはあるけど、毎日そんなの心臓が持つ気がしないので。長年一緒にいるとはいっても、もう結婚しているとはいっても、恋愛はまだ始まったばかりという複雑さ……。

ノックをしたものの、ドアの向こうからの反応はない。

「正臣、起きてる? 朝!」

声のボリュームを上げたところで“しん……”と無反応。昔から、いつも眠そうだなぁとは思っていたけど、こんなに朝に弱かったとは……。
男の子の部屋に無断で入るのには抵抗があったけど、早く起こさないと朝食が冷めきってしまう。焦りもあって、私はドアの取っ手に手をかけた。

「入るよー」

ガチャッとドアを開けると……案の定、ベッドの中ですやすや眠っている正臣がいる。さっきまでの私の声は一切耳に届いていなかったと知って脱力。

だけど、不思議と怒りは湧いてこなかった。体を横にしてこっちを向いて、枕に頬を沈めて子どもみたいにあどけない顔で眠っている。その無防備さに毒気を抜かれて、私は息をついた。

優しく揺り起こそうと、掛布団の上から正臣の体に触れる。

「正臣。ご飯できてる」
「ん……」

長い睫毛が“ぴくっ”と震える。まだ瞼は下りたまま。
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