高校生夫婦はじめました。


さっき自分で結んだばかりなのに、どうしてこんなに曲がっているんだろう。

彼は自然に体を私のほうに向けて、なおされるのを待っている。私も特に躊躇うことなく、正臣のネクタイに手を伸ばして結び直す。一番上のボタンははずされているから、それに合わせて緩く結ぶ。

何気なく結んでいたけど、少し目線を上にずらせば綺麗な鎖骨が見える。その上には、私と違って出っ張っている喉ぼとけ。

(……うわ)

間近で目の当たりにすると、どうしても“男の子のカラダ”を意識してしまった。そんなこと、正臣には絶対に言えないので慌てて視線を下げる。ネクタイは既に結び終えていた。

私はなんでもない風を装った声で言う。

「――はい。できた」
「ありがと」

お礼を言われて、小さく笑い返して、私たちは一緒に家を出る。電気を消して、戸締りをして。誰もいなくなった家に鍵をかける。

ここに暮らしているのは正臣と私だけだから。


時任正臣、18歳。
時任知佳、18歳。


まだ高校生ながら、入籍済みのれっきとした夫婦です。
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