高校生夫婦はじめました。
一生懸命突き詰めてみるけど、ちょうどいい言葉が見つからない。過剰な言葉じゃ嘘くさくなる。でも、どんな言葉でも足りないような気もしている。

自信がないまま口を開いた。

「正臣ともっと……夫婦らしくなりたい、なーって……」

自信がないから、言葉は尻すぼんだ。“夫婦らしくなりたい”は間違ってはいないと思うけど、説明しきれてないような。
正確に伝えようといっぱいいっぱいになっていると頬が熱くて、息苦しかった。正臣が珍しく困っていたのも理解できる。これは難しい。

難しくて、苦しい。

深呼吸をしようと顔を上げると、くすぐったそうな表情の正臣が私を見ていた。柔らかく笑って――“くしゃくしゃっ!”と大きな手で髪を撫ぜられる。

「わ! えっ!?」

なぜ!?

朝に念入りに梳いた髪をぐちゃぐちゃにされる。「ちょっと!何してんの!」と怒ろうとしたら思ってた位置に正臣はいなくて――もっと近くにいて。

すぐ耳元で声がした。



「           」



耳打ちをした正臣は、横を通って歩いて行ってしまう。

廊下の真ん中に取り残された私はしばらく動けなかった。耳打ちされた言葉が、あまりに鮮烈で、衝撃的で――――甘かったので。





“委員会終わったら走って帰る”





(……夜までに死ぬかも!)




ときめきすぎて、もうダメだった。

もう英単語どころじゃないです。
< 40 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop