高校生夫婦はじめました。


その後二人で話し合って、私たちは決めた。今後生活していく上で照れてたんじゃお互いにもたないから、過剰に意識するのはやめようと。私たちは家族。家族のパンツくらいどうってことない。…………どうってことない!

光の速さで畳み終え、夕食の準備に戻る。メインはハムステーキ。汁物はオニオンスープ。私はたまねぎを切りながら、彼との決めごとについてあらためて考える。

家族だから“意識しない”なんて、できるかな。正臣と話し合ったときは“そのうち慣れるはず”と思って合意したけど。完全に意識しないことに自信が湧かないくらい、正臣のことを好きすぎる気がする。いくら夫婦になったとはいっても、実際はまだ気持ちが通ったばかりだから。

今晩これから正臣としようとしていることだってそうだ。結婚しているからといって何も変わらない。なんら普通の、平凡な高校生カップルが臨む初体験。意識しないほうがおかしい。

(……うまくできるかなぁ)



着実に迫る“初めて”の瞬間に思いを馳せて心臓を痛くしていると、離れたところから“ヴーッ、ヴーッ”と低いバイブレーションの音がした。――――私のスマートフォンだ。
帰宅したときにスーパーの袋と一緒にテーブルに置いたことを思い出し、サッと手を洗ってエプロンの前で拭きながら移動して、電話に出る。

出る間際に見えた電話番号で、少し嫌な予感がした。
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