高校生夫婦はじめました。

「――はい。もしもし」



『知佳? あなた今どこにいるの?』



嫌な予感は的中して、電話をかけてきたのは親戚の伯母さんだった。お母さんのお兄さんのお嫁さんにあたる。この伯母さんのキンキンと耳に痛い高い声と、まくしたてるような早口が私は幼い頃から苦手だった。

電話に出た瞬間に膨らんだ苦手意識を握り潰すように、空いているほうの手で自分の制服のスカートの裾をぎゅっと掴む。本当のことを話せば絶対にいい顔はしないとわかっているけど、嘘をつくわけにもいかない。

慎重に言葉を選ぼうと、ゆっくり口を開いた。

「……今は――」
『まさか年頃の男女が一緒に住むなんて、』

私がしゃべりだすのが遅かったせいか、伯母さんが言葉を被せてくる。責めるような口調に気圧されて私が口をつぐむと、伯母さんはわざとらしく間を置いた。

そして、はなから確信しているように、こう言った。

『……そんなふしだらなこと、してないわよね?』
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