高校生夫婦はじめました。
(……ふしだら?)
私はスマホを耳に当てたまま黙った。少し考え事をしていた。
この感じだと、伯母さんは私が正臣と住んでいることを知っている。きっと祖父から聞いたんだろう。正臣と結婚することを決めたときに、祖父にだけは報告していた。どこの家に引き取られるつもりもない以上、そのことは早めに伝えておいたほうがいいと思ったから。
祖父は良いとも悪いとも言わなかった。
「そうか」と一言だけで、後はずっと熱いお茶を飲んでいた。
急に引き取り手を決める必要がなくなったとなれば、どう解決したか気になるのは自然なことだと思う。それを祖父は「そうか」で済ませてくれたけど、他の親戚はそうもいかなかったらしい。伯母さんの声は明らかに怒って、呆れている。――どうして?
(自分が引き取ろうと思ってたわけでもないでしょうに……)
急速に心が冷え込んでいくのを感じながら、私は今さっき伯母さんが放った言葉について尋ねた。
「……“ふしだら”ですか?」
自分で思ったよりも冷たい声が出てしまった。それが気に障ったのかもしれない。伯母さんは声を荒げて、私の苦手な早口でまくしたててくる。
『何言ってるの、ふしだらでしょう! お義父さんったら……こんなめちゃくちゃなことを放置だなんてありえない。相手の親も何を考えてるの!? あなたもあなたよ……止める大人がいないのをいいことに同棲なんて、理性のない高校生がバカなことを!』
――バカなこと?
正臣と過ごす夜を待って、期待と不安でドキドキしていた心が急速にしぼんでいく。“バカなこと”と言われて、私は一気に恥ずかしくなった。ここ数日の自分を全否定されたような心細さに、息が詰まる。