高校生夫婦はじめました。
伯母さんの言葉は止まらなかった。
『あなたも可哀そうにね……。母親が働き詰めで、ろくに教育もされずに――』
そんなことない。
そんなことないのに。
全力で育ててもらった自覚があるのに、何も言い返せない。
お母さんの悪口が聞くに堪えなくて、やめてほしい一心で「ごめんなさい」と謝ってしまいそうだった。謝ってしまえば、非を認めた私はもう伯母さんを納得させることができなくなってしまう。この新居を離れ、また親族の間をたらいまわしにされてしまうんだろう。
そんなのはもう嫌。
電話の向こうではまだ、伯母さんが呆れた声で何かを嘆いている。
『もっとちゃんと――――それで――――していたら、まともに――』
心が言葉を拾うことを拒絶していた。このまま電話を切ったら怒られるだろうか。伯母さん、ここに乗り込んできそうだな。それは困るな……。
言い返すことも、電話を切ってしまうことも叶わずその場に立ち尽くしていると――パッと、手の中からスマホが奪われた。
背後から耳慣れた声がした。
「もしもし」
顏だけ後ろを振り返って、ギョッとする。背後に立っていた正臣は、私から奪ったスマホを耳に当てて電話に出ていた。いつの間に帰ってきていたのか。