高校生夫婦はじめました。
「な、ななっ……」
動揺した私がどもっていると、正臣は身長差で私のことを見下ろしながら、“しー”と自分の口元に人さし指をあてた。“黙ってなさい”というジェスチャー。そしていつもと同じ落ち着き払った顔で――――。
「はじめまして、時任正臣です」
うわぁ。ほんとにしゃべった……!
信じられないものを見ている気分だった。
電話の向こうで、動揺して目を見開く伯母さんの顔が簡単に想像できた。
「知佳の代わりに聞きます。ご用件はなんでしょうか」
首が痛いので体ごと正臣のほうを向く。目線より少し上にある正臣の顔を見つめながら、ドキドキと通話の様子を見守る。
正臣は冷静な顔をしているけれど、彼が持っている私のスマホのスピーカーからは伯母さんの金切り声が漏れ聞こえていた。伯母さんが動揺したのは最初だけで、正臣のことも私と同じようにまくしたてて説き伏せようとしてるみたいだ。
耳を澄ますと伯母さんの声がわずかに聞き取れた。
『どうせ下心なんでしょう!』
そう言われた瞬間の正臣と目が合う。タイミングがタイミングだっただけに、私が目で“下心なの?”と尋ねるみたいな間が生まれた。正臣は私の目を見ながら、私に返事するようにスマホに向かって声を発する。
「……下心がないとは言いません。でも下心だけで結婚はしません」