高校生夫婦はじめました。
頬がじんわり熱くなる。その言葉は信じられるし、嬉しかった。
恥ずかしくなって正臣の目から視線をはずす。少し目を伏せると、遅れて伯母さんの混乱した声が聞こえてきた。
『…………結婚ですって!?』
あ。伯母さん、結婚のことまでは知らなかったのか……。
“それはもっと慎重に伝えるべきだったかも”と思ったものの、正直もうそれどころじゃなかった。正臣が何をしゃべるのか。それだけが気になって、私は彼の唇を見つめていた。
正臣は伯母さんとの通話を続ける。
「先日入籍しました」
『にゅ、入籍、って、そんな……あなた達まだ高校生でしょう! そんな、簡単に入籍していいわけがっ……』
「どうして“簡単に”って決めつけるんですか?」
『どうしてって……』
「高校生が決めることは、なんでも簡単だと思いますか」
正臣の言葉は静かで強い。少しも揺れない声には太い芯が一本通っているようで、そう簡単には折れそうもない。
電話の向こうの伯母さんは明らかにうろたえていた。
『おかしいでしょう、どう考えても……まだ高校生なのよ? もし知佳が妊娠でもしたらあなた、どう責任を――』
正臣の口が、電話の向こうに聞こえないくらい小さなため息を吐いた。それを見ていた私。正臣は通話中のスマートフォンを自分の肩で挟んだ。そして自由になった両手で、ゆっくりとした動きで私の両耳を塞いでくる。
「え」
なんで耳を塞いだ?
(まさか……伯母さんにひどいこと言うの?)
それは言わせたくない。