高校生夫婦はじめました。
それから程なくして、彼は私の耳を塞いでいた手をゆっくりと取り去った。それから電話を切った。やりとりから察するに、伯母さんを納得させることはやっぱりできなかったみたいだ。だけどそれでも、今すぐここに伯母さんが抗議にやってくるということはなさそう。
正面にいる彼の顔を見る。至近距離にいると身長差で少し見上げないといけない。電話を終えた正臣は私の顔をじっと見たかと思うと、気まずそうに眉を下げた。
「…………聞こえてた?」
「ううん、全然。何も」
「顔が変。……ほんと嘘つくのヘタだな。耳まで真っ赤だし」
指摘されてサッと両耳を自分の手で隠した。だけど変になっているらしい顔までは隠せなかった。私も気まずい顏で正臣を見る。
こっぱずかしくてムズ痒い。そんな空気が我が家のリビングに流れる。チクタク鳴る時計の音。テレビを点けておけばよかったと後悔するくらい、どうにもならない無言の恥ずかしさ。
正臣はわざとらしく咳払いをして、真面目な顔になった。
「……周りの反応は、こんなもんだろうなって思ってた。すんなり許してくれたうちの親父や知佳の爺さんが奇特なだけで、普通、こういう反応になるだろうなって」
「そうだよね……」