高校生夫婦はじめました。

私は一瞬だけ躊躇したものの、正臣の柔らかい笑顔に安心してベッドの上に乗った。片膝を突いて体重をかけるとベッドが“ギッ……”と軋んで、体が不安定に揺れる。そのままヨタヨタとふらつきながら両膝で進んで、正臣の腕の中へ。辿りつくとぎゅぅっと抱きしめられた。

(あ……)

正臣の匂いだ。
清潔なせっけんの香りにほっとする。

抱きしめられた拍子に頬をぺったり彼の胸に押し当てる体勢になっていて、そこから彼の心臓もドクドクと速く大きくなっていることに気が付いた。……正臣も緊張してる?

「知佳」

控えめな声で名前を呼ばれ、顔を上げる。正臣と目が合う。今は歳相応の男の子みたいに少し緊張した表情で、私のことを見ていた。

「……キスしていい?」

心臓が口から飛び出そうなほどの緊張に襲われながら、「ん……」と小さく頷いて合意する。これが初めてのキスになる。胸を触られたり、舐められたりはしたけれど、正臣がキスをここぞというときに置いていることには気づいていた。

目を閉じると、顔がすぐそこに迫ってくる気配を感じた。遅れて“ふにっ”と唇に柔らかい感触があって、しばらくくっつけたままでいる。唇の表面を触れ合わせるだけのキス。

(……わぁ)
< 56 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop