高校生夫婦はじめました。
正臣は私を生まれたままの姿にして、一度ベッドを離れた。
ベッドの隣にあるラックの引き出しを開け、しばらく中をごそごそと探り、中から正方形の小さな袋を取り出す。
あっ、と私は思った。
振り返った正臣も神妙な顔をしている。
「あのさ、知佳。当たり前のことだとは思うけど」
「うん」
「これも決めごとにしておいたほうがいいと思う。ゴムは必ず着ける」
「……実は私も買ってきた。ソレ」
「えっ」
「こういうのって、男の子任せじゃいけないのかなと思って……」
「いつ?」
「…………内緒」
正臣は自分の腕で口元を隠し、“ぷくくっ”と笑う。
「……なんで笑うの!」
「や、なんか……どんな顔してレジに持っていったか、想像がついて」
想像通りな気がするから余計に腹が立った。数日前、私は放課後ドラッグストアに行った。制服で買いに行くのは抵抗があったので、一度家に帰ってから私服に着替えて。
ティシュペーパーのストックや生理用品やシャンプーに精一杯紛れさせて購入したソレ。たくさんあるけどどれがいいのかもわからなくて。でも棚の前で吟味することもできるわけがなくて、結局一番シンプルなものをカゴの中に放り込んでそそくさとレジに向かった。絶対に顔が強張っていたし、不審だったと思う。
正臣はツボに入ってしまったようで、しばらく笑いを噛み殺そうと格闘していた。
「笑いすぎっ……」
「あー、ごめん……くくっ……。それで? 買ってきたやつはどこ?」
「……私の部屋」
「取りに行く?」
「いいよもうっ」
「じゃあ、それはまた次のときに」
勝手にそういうことにされた。あまりに正臣が笑うので私が不貞腐れていると、彼は横たわる私の頭を上からくしゃくしゃと撫でた。
「わ! また頭……!」
「今度からは俺が買う係ってことにしよ」
「…………お願いします」
「うん」