最弱救世主とドS騎士
勇者あるある

『おめでとう』と口々に言われて人の波にもまれる。

「リナ様」
シルフィンが泣きながら抱きついてきた。

「おめでとうございます。大好きなおふたりのご結婚が嬉しいです」
ぎゅーっと抱きつかれ
愛しさがこみ上げる。

「曲を聴いて泣いたのは初めてです。ありがとうございました」

「シルフィンの魔法のおかげだよ」
靴といいピアノといい
お世話になりました。

「今日は素晴らしい日です」

シルフィンの言葉の後に花火の音が聞こえ、大きな窓から外を見ると大輪の花火が上がっていた。
城の中庭で遊んでいる子供達の歓声が聞こえた。

私はふらふらとベランダに出て、空を見上げる。
なんて綺麗な花火なんだろう。
一瞬の美しさが儚い夢のよう

アレックスのプロポーズを受けてしまった。

もう
自分の居た世界には戻れないかもしれない。

王様の嫁になり
妃となって城で暮らす。

玉の輿。
シンデレラもビックリのサクセスストーリー。
アレックスの嫁になりたいフレンドに知られたら号泣されそうだ。ごめんね。

あんなに素敵な人にプロポーズされたのに
ときめかないのはどうしてだろう。
逆に心が苦しくて泣きたくなる。

ふとベランダの下を見ると、リアムが石垣に背を預けて空を見上げていた。
そして私の視線に気付いたのか顔を上げ、私の顔をジッと見つめる。

喧噪の中
ふたりの視線が絡み合う。



< 106 / 236 >

この作品をシェア

pagetop