最弱救世主とドS騎士

「ヤルことヤッたから、子供ができたのでしょうが!」

「失敗は……してない……はず」

「他の男の子じゃない?」

「言っていい事と悪い事があるぞ。彼女を侮辱するな」

自分の発言に酔う彼を見て『バカじゃないの』と思ってしまう。
一流商社勤めで顔もそこそこ良い
優しくて面白くて
友達の友達から始まった恋だった。
楽しく一緒に過ごしてきて
これからだと思っていたら別の女に取られてしまった。

一番のバカは私かもしれない。
最近は仕事も忙しくて、彼との時間も少なくて浮気に気付かなかった。

油断してたんだ。
彼だけは大丈夫って思ってた。

でも『彼女』ときたか
今のあなたの彼女は、私じゃなくて別の女なんだね。
その一言で背中に冷水をかけられたように、一気に醒めてしまった。

「もういいよ。荷物もまとめて送ったんでしょう」

「里奈……」

「さよなら」
私がそう言ってプイッと横を向くと、サイドボードのガラス越しに映った彼は安堵の笑顔を見せている。
ちょっと!
笑顔ってどーゆーことよ!


くやしい

もっと粘って
嫌味をガンガン言えばよかったのか。



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