最弱救世主とドS騎士

「リアム」

「何だ?」

「私がこっちの世界に飛ばされてしまったけど、あっちの世界ではどうなってるのかな?私が消えた形になってると思う?仕事も途中でみんなに迷惑かけてるかもしれないね。家族や友達が心配して探してないかな」

「王と、その件について話をした夜があった」

「そうなの?」

「王が言うには『リナの世界はそのままだろう』と、言っていた」

「というと?」

「根拠はないようだが、あちらではもう1人のリナがいて、普通にそのまま過ごしている気が私もする。だからもう1人のリナがこちらに現れたと思っていいと思う」

「あー何となく、そう言われたら、そんな気がしてきた」

棒読み口調で答えてしまう。
私もそう思う。
向こうではそのまま、もうひとりの私が普通に現代を過ごしているのだろう。
だから家族も両親も泣いてないだろう。
よかったような虚しいような気分。

私だけがこっちに飛んで来てしまい
もう向こうには帰れないまま
王様の嫁になってしまうか
死んでしまうんだろう

急に悲しくなってきた。

勝つか負けるかわからないし
自分にかかってると思ったら
全て捨てて前の世界が恋しくなる。

そんな気持ちがポンコツなのだろう。

髪の毛をくしゃっと大きな手で撫でられた。
優しい手触りが涙腺に触れる。

「また明日にしよう」

「うん。明日頑張る」

みんな頑張ってるのにゴメン。
絶対勝つ!という強い気持ちが大切なのに、まだ迷ってる自分がいるんだね。ポンコツのダメダメなヤツ!

私も明日頑張るから
今日はちょっとだけ落ち込ませて下さい。


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