最弱救世主とドS騎士
「たちの悪い悪霊だ。人の心の隙間に入り込む」
リアムの広い胸に抱かれて
その心地よく響く声を耳元で聞いていたら、さっきまでの恐怖が薄れてきた。
「悪霊は不安な心を持つ人間が大好きだ」
不安な心?
リアムの顔を見上げると、まだ私の涙が残っていたのか、リアムの長い指が私の頬をぬぐう。
「元の世界に戻りたいか?」
リアムの質問に黙ってしまう。
中途半端だよね私って
だから悪霊に狙われるんだよ。
「リナのピアノをもう一度聴きたい。心に響く演奏だった」
「ありがとう」
「また弾いてくれるかい?」
「もちろん。シルフィンに魔法をかけてもらわなきゃ」
やっと会話ができるようになり
安心したのかリアムは目を閉じて私をきつく抱きしめた。
「俺は戻ってほしくない」
「リアム」
「わがままだと思う。でも、リナにはここに居て欲しい」
「国を救う為?王の妃になる為?」
自虐気味に言うと
いきなりリアムは私の身体をクルリと正面に向け、自分は真剣な顔をして私の上に体勢を持ってくる。
天井と私の間にリアムの顔がある。
男らしい端整な顔。