最弱救世主とドＳ騎士

時間は経過する

嫌でも経過する

時間は悲しみより強し。


私はキーボードの手を止め、ふと１５階の窓に広がる空を見つめた。

人が流れる総務課のオフィスでは、様々な音が波のように寄せて引いていた。
大きな窓から見えるのは青い空。
雲ひとつない青い空。

空ってこんなに青かったっけ？
そういえば
最近は下ばかり見ていたから、気付かなかったかもしれない。久しぶりに空を見たかも。

「宮本さん。午後イチの会議資料はそろってる？」
課長の声で我に返る。

「はい。来年の創立３０周年の企画資料ですね」

「ありがとう。君も参加できるかな？」

「はい大丈夫です」
そう答えながら
今日中に片付ける仕事をグルグルと頭の中で素早く整理する。

「宮本先輩すいません。このアンケートですが昨年も使用してますよね」
「宮本さん、これ経理から届いてるけどわかる？」
「宮本さーん。こっち先でお願いします」

男に振られたばかりだけど、就業時間限定で私はモテる。
あちこち動きながら効率よく処理して午前中を終わらせようとしていたら

「みんな宮本君に頼りすぎだよ」と、笑って部長がそう言った。

だから私は「大丈夫です。元気に定年まで働いて、重役目指してバリバリ働きます！」

そう宣言すると

みんなの顔が固まった。