最弱救世主とドS騎士
手のひらほどの小さな短剣だったが、切っ先が鋭く心臓に刺さったら間違いなく一突きで死ぬだろう。鏡のように磨かれたその側面に私の驚いた顔が映る。その先端が軽く私の胸元に触れると、呼吸をしただけで赤い血が流れそう。
「アレックス?」
怖くて声が震えて小さくなる。
「しーっ静かに。動くと死んでしまう」
「アレックス」
怒ってる?
いやもちろん怒ってるよね当然でしょう。
でもこの場で私を殺してしまうの?
背中が小刻みに揺れる
フレンドが怖がって泣いている。
死にそうな場面だけど
私は泣いてるフレンドが気になってしかたなかった。
「正直に言いなさい。リナの心は誰にある?」
「私の心?」
アレックスの表情が読めない。
怒っているけど
怒りよりもっと何かありそうで……でも胸元から血を流している私は頭が回らない。
するとアレックスは
「リアム!すぐ私の前に現れろ!リナがどうなってもいいのか?」
大きな大きな声で叫び
鋭い雷を呼び込んだ。