最弱救世主とドS騎士
「リアムには幸せになって欲しい」
じんわりと真冬に飲むホットワインのように、アレックスの言葉は優しく温かかった。
「リナ。私達はずっと子供の頃から一緒で、兄弟のように過ごしてきたのだよ。遠慮なくケンカもよくする仲だった」
「王……」
「もうアレックスでいい」
軽く手を上げて抑えるようにアレックスはリアムに言う。
「それが私達の両親が殺され、私が背中に大きな傷を負った日から、リアムが変わった。自分を犠牲にして私の為だけに生きようとしていた、私は忠実な部下を持ったけど、大切な兄弟を失ってしまった」
アレックスの目線が遠くを見る。
私は王の孤独を感じてしまう。
「ここだけの話だが……今回の闘いは負けるだろう」
いきなりの敗北宣言に私とリアムは目を合わせて驚き、思いっきり否定しようと思っていたら、アレックスが私達に目線を合わせる。
「だから私は、堂々とリアムに幸せになって欲しい。私に遠慮して隠れてコソコソと互いのベッドで愛し合ってるのだろう」
そこまでわかってた?
頬がカーッと熱くなる私。
「どこで自分の気持ちを出して、私に宣戦布告するかと思えば情けない」
「しかし……」
「しかし……何だ?言ってみろ」
アレックスに遊ばれてます。
その様子が楽しくて笑ったら、アレックスも笑う。
するとリアムも笑顔を見せてくれて……三人で声を出して笑った。冷たい夜風が心地良くて、ずっと離れていた懐かしい大好きな同級生と会ったような気持ちになって、ずっとずっとこのまま三人で笑っていたかった。時間が止まって欲しかった。
それくらい
意味のある大切な時間で
こんなに楽しく嬉しい時間なのに
終わるのが怖くて
切なくなった。