最弱救世主とドS騎士
「今日はお互い疲れたから、ごほうびワインか」
数時間前の冷たい表情が嘘のように、アレックスは優しく私に微笑んでグラスを向ける。
「アレックスに殺されるかと思った」
「ごめんごめん。ああでもしないと、リアムの本気が見れなくて。悪いのはリアムだから」
色気のある顔でウインクされたら
何も言えません。
悪いのは全部リアムで問題ないです。
「リアムを頼む」
笑顔の裏を覗くのが怖い。
アレックスはドームを造ったり、リアムを想って私にお願いしたりで、死を急いでる予感がしてたまらない。
「アレックス」
「ん?」
「何度も言うけど、私達は勝つよ。勝ってみんなで幸せに暮らしましたって結果になる」
「占い師リナ」
「いや冗談じゃなくて、私なんてあっちの世界じゃ、付き合ってた男に結婚寸前で捨てられて、仕事に生きるしかない平凡なOLだった。臆病で別の生き方もできない女だったけど、こっちの世界に呼ばれて気付いたよ。アレックスのお母様に呼ばれたんだよ。この国を救う為に私はやってきた。自分の道は自分で切り開く。ダメとか無理とか言いたいけれど封印しようよ約束しよう」
そう言いながら
一番先に約束を破って言いそうなのが私だけど。
「アレックスを見ていると辛い。リアムもそうだけど頑張り過ぎて押しつぶされそう。みんないるよ、私もシルフィンもジャックも国民もみんないるから……だから絶対勝とう」
言霊よ我に降りろ!
真剣に私がアレックスに言うと、アレックスはゆっくり「ありがとう」と言い私に近づきそっとハグをした。