最弱救世主とドS騎士

まだ夜まで時間があるのに
太陽は隠れて暗幕に包まれたような闇が広がる。

星ひとつない闇夜。
飲み込まれてしまいそうな黒い闇。

突き刺さるような雷が東の領地に落ち、森が焼かれる。

小さな黒い粒子が空に集まり
身震いするような人の顔になる

人のようで
人ではない。

それは尖ったアゴと耳の上に小さな鋭い角を持ち、大きな口は耳まで裂け、ひと口で噛み殺す凶器の牙も持っていた。おどろおどろしい目も大きく、ひと言で言えば怖くてたまらない顔。背筋が冷たくなってきて、魔法の剣を抱きしめながら両手の中指の指輪を内側にしてギュッと握る。アレックスとリアムのお母様、見守って下さい。私が恐怖で倒れないように見守って下さい。

『王とドラゴンよ。覚悟はできたのか?』

低く響く声だった。
その声だけで身の毛がよだち、全身が震えて立っているのが精一杯だ。

「私の覚悟はできている。返事は……これだ」
アレックスが威厳のある声で空に向かってそう言うと、隣のリアムが私の身長より大きな銀の弓を引き、用意していた黄金の矢を力いっぱい空に放つ。

宣戦布告!

ジャックの合図で騎士団達が一生に動き出す。
100人ほどの精鋭部隊はペガサスに乗りながら空を飛び、弓で魔王の顔をめがけて矢を放った。

アレックスは強くなってきた風を受けても乱れもせず、大きな白樺の杖を持ち呪文を唱えながら杖の先から稲妻のような光で魔王を攻撃して、シルフィンはアレックスの集中を邪魔させるものは殺す勢いで、小声で呪文を言いながら目を光らせていた。

それでも魔王は鼻で笑い、騎士団達をうるさい蠅のようにあしらって、大量の矢も突き抜けて無駄に終わらせてしまう。たまにアレックスの光を浴びた時だけ攻撃が効くのか、目を閉じて嫌な顔をする。

荒れ狂う空に一匹の龍が暴れている。

フレンドだった。

しなやかな動きをしながら魔王の隙を狙い、大きな目を血走らせながら鋭い爪で実態のない目を斬り裂こうとするけれど、魔王の顔を作る黒い粒子がスッと消えてまた別の場所に形を作る。

緑色の龍は怒りながら大きな声を出して口から火を吐き出し、私は見た事のない機敏さと破壊力に驚いた。

これが
あの
泣き虫で甘ったれのフレンド?

今まで会った龍の中で一番強くて美しい。





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