最弱救世主とドS騎士
「リアム様」
ジャックが恐る恐る境界線の花瓶まで歩き、二人のリアムの前に立つ。
リアムを尊敬して騎士団に入ったジャック。
仕事で一番リアムを知るのはジャックだろう。
「昨年の樹氷祭の話です」
ジャックが話し始めると、二人のリアムはジッとジャックを見つめた。
ひとりでも威圧感溢れるリアムが二人も目の前にいるなんて、話しにくいかもしれないけど頑張れジャック!
「式典を終わらせて、どこからかゴブリン達が集まって酒盛りを始めて、祭がぐちゃぐちゃになって大騒ぎでしたよね」
「あれは大変だった」
「神官の説教は長かった」
「あれ……一番最初にゴブリンに酒を飲ませたの……俺なんです」
ジャックのカミングアウトにリアム達は背筋を伸ばして剣を抜いた。
「知らん顔してたのか?」
「お前は何をやっている!」
あまりの迫力にジャックは境界線から逃げ出して私達の後ろに隠れた。
「両方ともリアム様です」
必死で私達に訴えるジャック。
その確認方法はどうかと思うが……。
「そうだろう」
気の毒そうに納得してアレックスが声をかける。
この王にして……いや、言うまい。