最弱救世主とドS騎士
「リナを信じている。リナの思った通り魔王を倒せ」
「あっちのリアムも『私を信じてる』って言ってた」
「俺の全てを把握してるから、俺の言いそうな事もわかってるんだろう」
鼻で笑ってリアムは私にそう言う。
「だからリナも間違うかもしれない。でもそれでもいい。お前に責任はない。お前はよくやった。だから、最後はお前の思う方を選べ」
「間違ってもいいの?私が間違ったら、この国は滅亡するよ」
声を震わせてそう言うと
左のリアムは私を抱く手に力を入れた。
「間違ってもいい。俺はお前に殺されてもいい。時間切れになる前に魔王を殺せ」
「はい」
私の返事に左のリアムは納得したように、手の力を緩めてくれた。
ずっとそのまま
彼の腕の中に居たかった。
私は振り返らずにアレックスの元に戻って黙り込む。
「どうだった?」
砂時計を気にしながら
アレックスたちは無表情の私を熱く囲む。
「姿も声も表情も、ふたりとも完璧なリアムだった」
私の報告に三人の意気が下がる。
「言いそうな事も同じ。一緒に居る雰囲気も同じ。私を信じているのも同じ……でも……」
「でも?」
「わかりましたか?」
「どっちがリアム様です?」
部屋中に三人のハイテンションな声が響き、砂時計の砂は残り少ない。