最弱救世主とドS騎士

右のリアムは「時間がない」と怒ったように言い。左のリアムは「リナの好きにしろ」と静かに言う。

左右のリアムは声も形も同じ
私の愛するリアムと
さりげないリアクションも同じ
言いそうな事も同じ

だけど

違う。

「こんなギリギリになっても、私は自分の愛する人がどっちか迷ってる」
二人の顔を見ながらそう言うと、左のリアムは目を閉じて右のリアムは真っ直ぐ私を見つめる。

行動が違う。

「愛してるリナ」
右のリアムがそう言うと、左のリアムのまぶたが動いた。

「私も愛してる」
右のリアムに答えると
左のリアムが素早い動きで剣を出して、右のリアムの喉元に切っ先を向けた。

「リナの信じるままに、ヤツを殺せ」
あと数ミリ突き刺さると、自分の命が奪われるの確定なのに、右のリアムは冷静な声で私に命令した。

アレックスたちが息を飲んで私達と砂時計を見つめている。

もう砂はあとわずか。

このままでは
リアム同士の殺し合いが始まるけど結果は見えている。
魔王には勝てない
本物のリアムは私達より先に死んでしまうだろう。

左手の中指がまた熱くなってきた
どちらのリアムが本物か
私の心は決まっているが

完璧なる確証はない。

間違って
愛する人を刺すのは怖い。
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