最弱救世主とドS騎士
あの日
『大丈夫ですか?宮本さん』
エレベーター前でコケた私に驚いて、佐藤君は手を貸してくれた。
『こっ……ここは?』
『ここは?って……普通に会社の廊下です。そこのエレベーター故障してますから使えませんよ』
『会社?会社って、えっ?今日って何日?もう秋だよね。秋の収穫祭りだよね!』
『そういえば昨日、梅雨明け宣言が出ましたね。秋のパン祭り?夏はこれからですよ』
佐藤君は引き気味に言って、逃げるように行ってしまった。
えっ?
ちょっと
ちょっと待ってよ
何これ?
戻った?戻ったの私?
自分の服装をまじまじと見てしまう。
味もそっけもない総務の事務服だ。
そしてここは見慣れた私の会社
握っているのは私の長財布
ポケットに入っているのは私のスマホ。
戻ったの?
このタイミングで?
いやこれから幸せになるのに?
超ド派手な挙式をする予定なのに
やっつけたら私は用無しってヤツ?
『いやだーーー!!』
座り込んで大きな声を上げてたら
そのまま
知らないうちに医務室に運ばれていた。